エリック・クラプトンの使用機材
エリック・クラプトンは、キャリアを通じてGibson、Fender、Martinなど複数のギターを使ってきました。ブルースロック期のレスポールとMarshall、Cream時代のSG、ソロ期のStratocaster、アコースティック演奏で知られるMartinなど、時期によって象徴的な機材が異なります。
ここでは代表的なギターとアンプを年代・用途ごとに紹介します。ライブ、レコーディング、ツアーごとに機材は異なるため、「いつも同じセット」という意味ではありません。
年代別の使用機材一覧
| 年代・作品 | ギター | アンプ・エフェクト | 曲・補足 |
|---|---|---|---|
| Yardbirds期(1960年代前半) | Kayのエレクトリック・ギターなど。時期により変更。 | Vox AC30を使っていたと本人が回想。 | 初期のブルース/R&Bバンド時代。 |
| Bluesbreakers/『Beano』 | Gibson Les Paul Standard(通称Beano Les Paul) | Marshall 1962系コンボ。確認できる曲別ペダル情報は限定的。 | 『All Your Love』『Hideaway』『Have You Heard』など、アルバム全体の代表的な組み合わせ。 |
| Cream/『Disraeli Gears』 | Gibson SG「The Fool」、ほかLes Paul・ES-335など | Marshall 100W JTM45系スタック、Vox wah。 | 「Sunshine of Your Love」「Tales of Brave Ulysses」など。 |
| Cream/『Wheels of Fire』 | SGなど複数のGibson | Marshallスタック、曲によりVox wah。 | 「White Room」ではwahが聞こえるギター・パートが印象的。 |
| Blind Faith(1969) | Stratネックを組み合わせたFender Telecasterなど | ステージ/曲ごとのアンプ構成は一定ではない。 | デビュー公演でTelecaster系の個体を使用。 |
| Derek and the Dominos/『Layla』 | 1956 Fender Stratocaster「Brownie」 | レコーディングではFender Champ系小型アンプ、曲中にFender Vibratone(ロータリー・スピーカー)。 | 「Layla」後半のピアノ・コーダ前に回転スピーカーの音色。 |
| ソロ期(1970年代~1985頃) | Fender Stratocaster「Blackie」 | Fender Tweed Twinをスタジオの主要アンプとして愛用。後年はMusic Manアンプも使用。 | 「Cocaine」「I Shot the Sheriff」「Lay Down Sally」など。 |
| 『Journeyman』(1989) | Eric Clapton Signature Stratocaster。例外曲はGibson ES-335。 | 楽曲・録音ごとに編成は異なる。 | 「Hard Times」ではES-335、それ以外のアルバム曲ではシグネチャーStratと本人が説明。 |
| 『MTV Unplugged』(1992) | 1939 Martin 000-42などアコースティックギター | アコースティック編成。曲に応じて複数のギターを持ち替え。 | 「Tears in Heaven」「Layla」などのアンプラグド演奏。 |
| 後年のツアー(2021 Rig Rundown) | Fender Stratocaster、Martinなど | Dumble製作のFender ’57 Bandmaster、Dunlop Cry Baby、Hammond Leslie 122XB、信号分岐スイッチ。 | その時点のツアー・セットアップの一例。 |
アルバム内でも曲ごとに複数のギター/アンプが使われることがあります。特定曲の情報が確認できない場合は、アルバム期・ツアー期のセットアップとして記載しています。
Yardbirds・Bluesbreakers期
Yardbirds:Voxアンプ
初期Yardbirds時代のギターは入手時期や出演ごとに変わります。クラプトン本人は後年のインタビューで、当時のアンプについてVox、AC30だったと思うと回想しています。特定の曲すべてが同一のアンプで録音されたとは限りません。
Bluesbreakers:『Beano』のLes PaulとMarshall
『Blues Breakers with Eric Clapton』期には、サンバーストのGibson Les Paul StandardとMarshallコンボの組み合わせが象徴的です。Les Paulの正確な製造年は資料に揺れがあるため、ここでは年式を限定しません。Marshall 1962コンボは後に「Bluesbreaker」の通称で広く知られるようになりました。
このアルバムの曲名でいえば「All Your Love」「Hideaway」「Have You Heard」などが該当します。ただし、個々のトラックの録音チェーンや設定まで一律に特定できるわけではありません。
Cream期と使用曲
Cream時代にはGibson SG「The Fool」のほか、Les Paul、ES-335、Firebirdなど複数のギターを使用しました。クラプトン本人も後年のインタビューで、Cream時代は固定の一本に決めず、SG・ES-335・Firebirdなどを弾いていたと振り返っています。
「Sunshine of Your Love」
代表的なギターはサイケデリック塗装の1964 Gibson SG「The Fool」、アンプはMarshall JTM45/100系スタックとして知られます。いわゆる「ウーマン・トーン」は、ネック側ピックアップを選び、ギターのトーンを大きく絞り、ボリュームを上げる奏法・設定としてクラプトン本人が説明しています。
「Tales of Brave Ulysses」
Vox wah-wah pedalが聴ける代表曲です。クラプトンは1967年にニューヨークのManny’sでワウを買い、その日にこの曲を試したとインタビューで語っています。ペダルを踏み込む位置で音の母音のような変化を作ります。
「White Room」
『Wheels of Fire』収録曲。曲中の印象的なwahパートは、Cream期のVoxワウ使用例としてよく挙げられます。ライブ版では演奏年や編成によって、ギターやアンプが異なる場合があります。
「Crossroads」
Wheels of Fireのライブ盤に収められたCreamの演奏では、SGを含むGibsonギターとMarshallスタックがこの時期のステージ機材の代表例です。録音と別公演の映像では、同じ曲でも実際に手にしているギターが違うことがあります。
Blind Faith期
Blind Faithの1969年デビュー公演でクラプトンが弾いたギターとして、バインディング付きのFender TelecasterボディにStratocasterのネックを組み合わせた個体が知られています。本人は当時Telecasterのネックが好みではなく、Stratのネックを使ったとインタビューで話しています。
この時期はCream期のGibson中心の機材からStratocasterへ移っていく過渡期です。公演の写真や映像で個体を確認できる一方、アルバム収録曲ごとの機材記録は限定的なので、曲単位で確証のない組み合わせは断定しません。
Derek and the Dominos『Layla』
『Layla and Other Assorted Love Songs』(1970)のクラプトンのメインギターとして広く知られるのが、1956年製Fender Stratocaster「Brownie」です。録音アンプについては本人がFender Champを使用したと回想し、関係者の証言にもChampが登場します。一方、具体的な小型アンプの組み合わせには異なる証言もあるため、全曲を一つのモデルに断定するのは避けます。
曲「Layla」
クラプトンのギターにはBrownieが使われました。曲後半のピアノ・コーダに入る前の回転するような音色は、Fender Vibratoneロータリー・スピーカーによるものと録音関係者が証言しています。アンプについてはFender Champが録音に使われた記憶が伝えられていますが、曲内・録音日の全パートが同じアンプとは限りません。
アルバム内のほかの演奏
「Anyday」ではクラプトンのスライド・ギターが聴けます。「Key to the Highway」などブルース・カバーを含め、アルバムの基本的なギター像はBrownieと小型Fenderアンプの組み合わせです。Duane Allmanも参加しているため、曲中のすべてのギター・パートをクラプトンの機材として扱わないよう注意が必要です。
録音時はCream時代の大音量Marshallスタックから離れ、小型アンプを使ったシンプルな音作りだったと関係者が説明しています。Fuzzやスラップバック・エコーを使わず、アンプとギターの音を中心にしたという証言もあります。
ソロ期:Blackieと使用曲
「Blackie」は黒いボディのFender Stratocasterにつけられた愛称です。複数の中古Stratocasterの部品を組み合わせて作られ、1970年代から1980年代半ばにかけて、クラプトンの代表的なステージ/スタジオギターになりました。
Blackieを使った代表曲
- 「I Shot the Sheriff」:ソロ期のBlackieを使った代表的な録音曲。
- 「Cocaine」:Blackieで録音された曲の一つ。ライブ版もStratocasterの印象が強い。
- 「Lay Down Sally」:Blackieを使ったソロ期の代表曲。
- 「Layla」ライブ版:アコースティック版や後年の公演を除き、ライブでBlackieを使った演奏が知られる。
Fenderの記録では、Blackieは1970年末から1985年まで主要なステージ/スタジオギターとして使われ、その後は引退。1988年以降はEric Clapton Signature Stratocasterが主力になっていきます。Blackie個体の仕様と市販シグネチャーモデルの仕様は別です。
アンプの変遷
クラプトン本人は、スタジオで特に気に入っていたアンプとして古いFender Tweed Twinを挙げています。また1970年代にはMusic Manアンプを使った時期があり、音量を上げてシンプルに歪ませるFenderアンプを好むと語っています。曲やツアーによって別のアンプも使われています。
『Journeyman』期
1989年のアルバム『Journeyman』について、クラプトンはEric Clapton Signature Stratocasterを基本的に使用し、「Hard Times」だけはGibson ES-335で録音したと説明しています。ES-335は、少しアコースティックなブルース・ギターの質感を出す意図だったと語っています。
本人の説明では同作にワウ・ワウの使用が多く、過去に「Tales of Brave Ulysses」で使って以来、ワウの表現を再び取り入れた時期でもあります。どの型番をどの曲で使ったかまでアルバム全曲に割り当てる資料は限られるため、ここではペダル名を特定せず「wah-wah」としています。
曲別:「Hard Times」=Gibson ES-335/それ以外のアルバム収録曲=Signature Stratocasterが本人の説明。これはアルバム録音の話で、ツアー版の使用機材とは区別します。
アコースティックと『Unplugged』
1992年の『MTV Unplugged』で使われた代表的なギターは、1939年製Martin 000-42です。番組・アルバムでは「Tears in Heaven」「Layla」などをアコースティック編成で演奏しました。現在のMartin 000-42EC 30th Anniversaryは、Unpluggedで使われた本人所有個体をもとにした記念モデルです。
Martin 000-28ECは別のシグネチャーモデルで、1939年製000-42そのものではありません。モデル名が似ていても、製造年・木材・装飾・本人使用個体かどうかを区別します。ライブや別のアコースティック録音ではMartin以外のギターも使われるため、ここではUnplugged公演の代表機材として紹介しています。
1988年以降のSignature Stratocaster
Blackie引退後、Fender Eric Clapton Signature Stratocasterがクラプトンの主力ギターになりました。2004年のギターテックLee Dicksonのインタビューでは、その時期の主力をSignature Stratocasterとし、数年ごとにピックアップや回路が変わってきたと話しています。
現行モデルの仕様例には、Vintage Noiselessピックアップ、最大25dBのアクティブ・ミッドブースト、TBX回路、トレモロブロック、ソフトVネックがあります。これは現行製品の仕様で、1980年代の本人のギターやBlackieの状態をそのまま再現したものとは限りません。
後年のツアー機材・エフェクター
ツアー機材は公演年により変わります。Premier Guitarの2021年Rig Rundownで紹介されたセットアップでは、主力アンプがAlexander Dumble製作のFender ’57 Bandmasterカスタム、もう一台が予備として用意されていました。
紹介されたエフェクトと信号経路
- Mike Hill製スイッチャー:ギター信号をアンプ側とワウ側へ分岐。
- Dunlop Cry Baby GCB95F:後年のツアーで使われたワウ・ペダルの例。
- Hammond Leslie 122XB:回転スピーカー。ワウを使った信号をLeslieへ送る構成が紹介された。
- 予備アンプ:同型のFender ’57 Bandmasterを予備としてマイク収音できる状態で待機。
これは2021年時点のツアーセットアップであり、Cream期やLayla録音時の機材ではありません。ワウやLeslieを使用する曲・アレンジは公演で異なります。過去のステージではFender TwinやLeslie、Cry Babyを使ったツアーもギターテックが証言しています。
曲で聴けるエフェクトの例
- 「Tales of Brave Ulysses」:Vox wah-wahの初期使用例として、クラプトン自身が言及。
- 「White Room」:Cream期のワウが印象的な曲。
- 「Layla」:スタジオ版の後半にFender Vibratoneの回転スピーカー音。
- 「Badge」「Wonderful Tonight」などのライブ:会場やツアーにLeslieを持ち込めない場合、コーラスを代わりに使うことがあると長年のギターテックが説明。
曲名から探す使用機材
| 曲・作品 | 時期 | 確認されている代表機材 | 注記 |
|---|---|---|---|
| 「All Your Love」「Hideaway」「Have You Heard」 | Bluesbreakers/『Beano』 | Gibson Les Paul Standard、Marshallコンボ | アルバム期の代表構成として記載。個別トラックごとの機材差は断定せず。 |
| 「Sunshine of Your Love」 | Cream/『Disraeli Gears』 | Gibson SG「The Fool」、Marshall 100Wスタック | ウーマン・トーンはネックPU、トーンを絞り、ボリュームを上げる設定。 |
| 「Tales of Brave Ulysses」 | Cream/『Disraeli Gears』 | Vox wah-wah | クラプトン本人が1967年に購入し、この曲で試したと回想。 |
| 「White Room」 | Cream/『Wheels of Fire』 | Vox wah-wah、Cream期のGibson/Marshall系 | 録音と後年ライブの機材を混同しない。 |
| 「Crossroads」 | Cream/『Wheels of Fire』ライブ版 | Cream期のGibsonギター、Marshallスタック | 演奏映像ごとにギター個体が異なることがある。 |
| 「Layla」 | Derek and the Dominos/スタジオ版 | Brownie Strat、Fender Champ系、Fender Vibratone | Vibratoneは後半コーダ前の特徴的な回転音で言及される。 |
| 「Anyday」 | Derek and the Dominos/『Layla』 | Brownie Stratによるスライド演奏 | スライド・ギターはDuane Allmanのパートと区別。 |
| 「I Shot the Sheriff」「Cocaine」「Lay Down Sally」 | ソロ期 | Fender Stratocaster「Blackie」 | FenderがBlackieを使った代表曲として紹介。 |
| 「Hard Times」 | 『Journeyman』 | Gibson ES-335 | クラプトン本人が同作の例外曲として説明。 |
| 「Before You Accuse Me」「Old Love」「Bad Love」 | 『Journeyman』 | Eric Clapton Signature Stratocaster | 本人による「Hard Times以外」の説明に基づくアルバム単位の整理。 |
| 「Tears in Heaven」「Layla」(Unplugged版) | 『MTV Unplugged』 | Martin 000-42などのアコースティックギター | 同公演・映像でギターを持ち替える曲がある。 |
同じ曲名でも、スタジオ録音・テレビ出演・ライブ盤で機材は異なります。表は作品/演奏時期を特定した代表例です。
ギター機材については、有名ギタリストの使用エフェクター一覧、エレキギター用語集、Slashの使用機材もご覧ください。